2018.10.09

TRIP

Special

見る人の心を映し出す
神秘と癒やしのクラゲワンダーランドへ

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海の月と書くクラゲ。水中を静かにゆらゆらと漂う姿は、まさに海面に映る月のよう。そのクラゲが今、インスタグラムで秘かに人気を集めています。jellyfishの名の通りプルンとしたなめらかなフォルムと透明感のあるビジュアル。ほわんほわんとした独特の動き。ちょっぴりミステリアスでかわいいその姿に癒やされる人が増えているようです。

そんなクラゲの魅力をもっと知りたくて、山形県にある日本一のクラゲ水族館を訪れました。

世界一豊富な種類のクラゲが並ぶ、展示室

日本海に面した高台に建つ鶴岡市立加茂水族館は、今や日本のみならず世界中からクラゲ目当てに観光客が押し寄せる人気スポット。現在、世界には約3000種、日本には約300種のクラゲが生息しているそうですが、加茂水族館では常時50種類以上のクラゲを展示しており、クラゲの展示種数世界一ともいわれています。

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美しいクラゲの水槽がいくつも並ぶ“クラネタリウム”では、普段なかなか見ることのできない色々な種類のクラゲたちをじっくりと観察することができます。深海のような静謐な空間。インディゴブルーの水槽にキラキラとゆらめくクラゲたち。その幻想的な世界に、一気に引き込まれていきます。ひと口にクラゲといっても、大きさや形、色もさまざま。一般的にクラゲというとキノコ型の傘に何本もの触手がたなびく姿を想像すると思いますが、ここには「え、こんな形?」「これがクラゲ?」と驚くほど実に多種多様なクラゲが展示されています。

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可愛らしいドット柄の傘にフリルのような触手を持つアイドルのようなクラゲや、四角い傘に針金のような長い触手を持つ地球外生物のようなクラゲ。また、ネオンのようにキラキラと光る種類もいます。2008年のノーベル賞で有名になったオワンクラゲは、体内にGFP(緑色蛍光タンパク質)という光るタンパク質を持っているため外部から刺激を受けると発光しますが、ウリクラゲやカブトクラゲは自ら発光しているわけではなく、プリズムと同じ原理で櫛板しつばんに光が反射し光って見えるのだそう。透明な体が七色の光にふちどられて浮遊する姿は美しいクリスタルのようで、この世のものとは思えないほど神秘的。よく見てみると泳ぎ方にもそれぞれ特徴があり、面白くてついつい夢中になってしまいます。

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この水族館は、今でこそ入館待ちの行列ができるほどの人気ですが、かつて入館者数の減少により閉館の危機に陥ったことがありました。しかし、現在の館長である奥泉さんが偶然、サンゴの水槽にいたクラゲの赤ちゃんを発見したことをきっかけに、その後、クラゲの飼育と展示に取り組み、起死回生の復活を遂げたのです。「自分で育てたクラゲをはじめて展示したとき、お客様がキレイなサンゴや熱帯魚の水槽よりもずっと長い時間、クラゲの水槽の前にいることにとても驚きました」。クラゲを見て喜ぶお客様の姿を目の当たりにし、そのときはじめてクラゲの持つ魅力と可能性に気づいたといいます。そして、難しいといわれていたクラゲの飼育と展示を並々ならぬ情熱と不断の努力で成功させたのです。

クラネタリウムの奥へと進んでいくと、直径約5メートルの巨大な“クラゲドリームシアター”があらわれます。まるで宇宙に浮かぶ青い惑星のような丸い水槽。その中を漂う約2000匹ものミズクラゲは、息をのむ圧巻の美しさです。優雅に泳ぐクラゲの姿に見惚れていると、やがて自分も水中を漂っているかのような錯覚に陥ります。

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時間を忘れて眺めていると、館長の奥泉さんが言いました。
「クラゲはずっと見ていても飽きない。いつまでも見ていられるというのが一番の魅力なんです。一見、何も変化がないように見えるけれど、そうじゃない。クラゲは、見ている側の心に変化をもたらすんです」

ゆるやかな流れの中でたゆたうクラゲを見ていると、忙しい日常から解放され、疲れた心がゆっくりと癒やされていきます。クラゲの泳ぐリズムには、見ている人の心を落ち着かせる作用があるのでしょうか。いつの間にか嫌なことを忘れ、リラックスしていました。

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しばらく眺めていると、クラゲはただ流されているのではなく、飄々と流れに乗って楽しんで生きているようにも見えてきます。「クラゲって、生き方上手なのかも…。なんだか羨ましいな」そんなことを考えていると、「クラゲは、見る人の心を映し出すんですよ」奥泉さんがそう言って笑いました。

たゆたうクラゲの動画をまとめました。ゆらめくクラゲは、あなたの心をどう映しますか。

クラゲがどんなふうに見えるかは人それぞれ。私たちはクラゲを見ているようで、実はクラゲに心を見透かされているのかもしれません。焦らなくていい。自分のペースで生きればいいんだよ。静かな水槽から、そんなメッセージが聞こえた気がしました。後編では、クラゲの誕生や成長の様子、生き方など、クラゲの生態について掘り下げていきます。

Written by Sachiko Sugano
Photos by Joh Igarashi
Movies by Munsell editing room
Special Thanks Tsuruoka City Kamo Aquarium, Yamagata Mirai Lab.

Special thanks

鶴岡市立加茂水族館
山形県鶴岡市にある世界一のクラゲ展示数を誇る水族館。クラゲの飼育方法などを知るために世界中から学者や飼育員が集まるほど。来館者向けの宿泊イベントや音楽の夕べなどイベントも盛りだくさんだ。庄内空港から車で20分。JR鶴岡駅より湯野浜温泉行(加茂経由)のバスで約30分「加茂水族館」下車。

https://kamo-kurage.jp/

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