2018.07.26

TRIP

Special

カラフルな多様性の先へ、未来のファッションとは──
世界が注目するアーティスト、長尾ヨウさん。

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世界各地の部族との暮らしを楽しみながら、色の概念を探し求める長尾ヨウさん。彼が表現するコラージュアートは、世界を旅するごとに少しずつ進化を遂げてきている。出会った人々から刺激を受け、彼が思う未来の民族のファッションとは──旅の記憶とともにその変遷をたどります。

進化する民族、3つの部族から見えてきた
現代へのメッセージ。

──2017年には、アフリカ南部を訪れていますが、フィールドワークの地にこの場所を選んだのはなぜですか。

人類の歴史をたどるなら、まずはホモ・サピエンスの起源といわれるアフリカ南部に行ってみようと思ったことがきっかけです。この地域には、ヘレロ族、ヒンバ族、デンバ族という3部族が暮らしています。彼らは同じ地域に住み、ほぼ同じ言語を話しつつも、まったく異なる文化を形成している珍しい部族。もともとヒンバ族とヘレロ族は似た文化を持っていて、どちらも裸族の生活をしていました。けれどもヘレロ族はドイツに侵略された歴史があり、今も残るファッションにビクトリア朝文化の影響を垣間見ることができます。

3部族の女性が写っているこの写真を見てもらうとわかる通り、もともと同じ文化を持っていたはずなのに、今では見た目が全然違うんです。(左からデンバ族、ヘレロ族、ヒンバ族)僕が何を言いたいかというと、西洋化していくことで、本来持っていた独自の文化が失われていくという現実が見えてくるのではないか、世界が同じ基準で均一化されていくことに対して、一種の危機感のようなものが見えてきました。

民族によっておしゃれの定義は多種多様。
もっと自由に、自分たちらしさを貫こう。

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現地で撮影したヒンバ族の写真の上に、彼らを象徴するカラーである、男性は青、女性は赤土色のコラージュアートを施した作品。

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デンバ族の女性。黒い肌とネオンカラーのコントラストが美しい。

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ヘレロ族の女性。ビクトリア朝の影響を受けたゴージャスなドレスに、パッチワーク風のコラージュを施したのがポイント。

──この作品はその3部族を描いた作品ですよね。

はい、今回フィールドワークをするにあたり、クラウドファンディングを利用して資金を募ったのですが、その支援者の方々へのお礼の品として制作したポストカードとTシャツの原画です。実際に現地で撮影した3部族の写真に、それぞれの部族を象徴するカラーを使ってペイントやコラージュを施しました。

──部族によって象徴するカラーが決まっていたとか?

例えば、ヒンバ族の女性は、赤が美しい色として好まれているんです。赤土にヤギのミルクで作ったバターを練りこんで、ファンデーションのように全身に塗り込む。それが彼女たちにとって、キレイでおしゃれだそうです。それに、向こうはとても日差しが強く、暑くて乾燥しているのですが、こうすることで虫除けや紫外線カットにもなるそうですよ。よっぽど汚れない限り一生を通してほとんどお風呂に入らないらしいですが、お肌を触らせてもらったらちゃんとしっとりしているんですよ。保湿効果もあって生活の知恵だなと感心しました。

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一方男性はブルーが最もかっこいい色とされていて、ヒンバ族の男性は子供のころから必ずブルーのものを身に着けているんです。

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一番カラフルな衣装をまとっていたのは、デンバ族の女性。3部族の中で一番肌の色が黒いので、肌とのコントラストでカラフルなネオンカラーが映えますよね。

──ヘレロ族の女性がかぶっている兜のような帽子は?

ヘレロ族の女性は、ラップの芯のようなものを布で巻き、ツノのようにしてかぶっているのですが、これが彼女たちのトレンドなんだそうです。実際に会って話を聞いてみると、限られた資源や情報の中でもちゃんとおしゃれをしているんですよ。ファッションについて質問すると、みんなうれしそうに答えてくれて。おしゃれをしたいと考える心は世界共通なんだなと改めて感じました。

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これまで世界各国で使われてきたさまざまなパターンを盛り込みながらも、そこにシュプリームやルイ・ヴィトンのロゴをコラージュ。

──こちらは近未来的な印象を受けますが、何かテーマがあるのですか?

これは、ナミビアから戻ってきた後、アメリカのコロラド州デンバーに新しくオープンしたMirus Galleryのグランドオープニング展に向けて描いた作品です。今では世界中で誰もが知っているようなロゴなどをコラージュすることで、未来の新しい民族の形を表現しています。さまざまな情報が溢れる現代社会でも、共通の美的感覚をシェアしつつも、周囲に惑わされずに自分のルーツや文化の多様性、そして本能的な感覚を大事にできれば、もっと世の中楽しく健やかに生きられるようになるんじゃないかな。そんな思いを込めて制作しました。

──コラージュアーティストのパイオニアともいえる長尾さんですが、そもそもコラージュという表現をするようになったきっかけは何ですか?

コラージュという手法を意図的にはじめたというよりは、たどり着いたらコラージュをやっていたという感じですね。小さいころから、新聞や広告をちぎって何か新しいものを作ったりすることが好きだったんです。僕のコラージュアートは、そのころからの延長線上にある感じ。コラージュは技法としては広く認知されていますが、なかなか個性を出しにくいということもあり、あまりアーティストの間では浸透していないんです。元々ある作品と作品の副産物としてのイメージが強いんでしょうね。僕は現在こういったテーマを持って制作しているので、しっかりとしたメッセージ性があるという点では、偶発的に作られる一般的なコラージュとはだいぶ違った表現をしていると思います。

──今後の展望は?

今年の夏はモンゴルに行って、仏教のお祭りを見て遊牧民のお家にホームステイさせていただく予定です。今後も1年に一度のペースで海外のフィールドワークを続けていきたいと思っています。いろんな国でフィールドワークをしながら、現地の若い子に向けたワークショップも続けていきたいですね。

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作品でいえば、立体の作品にも挑戦したいですね! 昔から、プラモデルやレゴを作るのが大好きで、コラージュの切ったり貼ったりする作業も、図工に近い感覚です。実は以前PangeaSeedのチャリティイベントのために木材でサメのオブジェを制作しました。その作品が全て売れたことを考えると、やはり立体作品を作ることは、より自分らしい表現をできる手段なんじゃないかと思うんです。近いうちに挑戦をして新たなフィールドを目指したいです。

現代社会へのメッセージをアートで表現し、これからも世界をまたにかけて新しいチャレンジを続ける長尾さんに今後も目が離せません。

Written by Mai Ueno
Photos by Kenji Nakata
Trip Phots by Yoh Nagao

profile

長尾ヨウ

愛知県出身。2012年よりドイツ・ベルリンを拠点に活動を開始。 主にファッション雑誌から切り出したコラージュと、アクリル絵具を使った作品を制作。 近年ではLA Art Show, SCOPE Miami Beachに出展し、Juxtapoz magazine, Hi-Fructose magazine, New York Timesにも作品が取り上げられました。国内ではJRA中京競馬場の2015年の年間ビジュアルにイラストが採用され、最近ではBacardi主催のNo Commission Berlinにも出展。2018年には名古屋パルコと春のキャンペーンでコラボするなど、さまざまなシーンで活躍中。

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